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ジュゼッペ、きみもインコなみにばかだな [読んだ本 / 好きな文章]


トリツカレ男 (新潮文庫)

トリツカレ男 (新潮文庫)

  • 作者: いしい しんじ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 文庫

いしいしんじという人は『ぶらんこ乗り』で初めて知って、あれが面白かったんでこの本も読んでみました。一冊の文庫本になってはいますが、ページ数が少ない上に1ページあたりの文字数も多くない(気がする)ので一気に読める。短編と言ってよいのではないかしらん。

あんまり関係ないですけど、現代の文庫本を読んだ後に、ちょい昔の、例えば安部公房とか遠藤周作とか昭和40~50年代ぐらいの文庫本を読むと、その1ページあたりの文字数の多さにびっくりしませんか?ああ、しないですよね。すいません。
読者が読み易いからかページ数をかせぐためか、昔と比べて今の文庫本がなぜ大きい活字を使っている(あるいはページにゆとりをもたせている)のか知らんけど、小さい字で埋まった文庫を読むと一般大衆なんぞに媚びてない姿勢がビシビシ感じられて、ああ昔は熱かったのだなぁと一人でノスタルジーにひたってます。全然違う理由だったらウケるー。

あと、安部公房といえば高校の教科書に載ってた『赤い繭』。現代文の授業はたいていどうしようもなく退屈で、しょうがないからその退屈しのぎに教科書に載ってる話をこっそり読んだりした人も多いと思うけど、そんな時『赤い繭』に出会ったのです。その衝撃ったらなかったね。見ず知らずの人の家に通りがかって「ちょっと伺いたいのですが、ここは私の家ではなかったでしょうか?」って何だよ!違うに決まってんじゃん!それに、最後は自分が繭になっちゃうなんてありえない。
そんだけインパクトを受けたのだからもちろん『砂の女』だとか、その他の有名な安部ちゃん作品もいくつか読んだけど、やっぱり衝撃度では『赤い繭』だね。今の教科書にも載っているのかしら。

あ、そうだ。この本の感想。
タイトルが『トリツカレ男』だし表紙も何だか怖そうなので勝手に中身を想像してましたけど、全然違いました。あたたかいファンタジー。すぐに何かにとりつかれてしまう主人公ジュゼッペのひたむきな恋物語で、わき目をふらないその突っ走り方がとても良いです。『ぶらんこ乗り』と合わせて考えると、ほんわかしてる雰囲気の最中にいきなりゾクッとさせる描写が紛れ込む、というのがいしいしんじの特徴の一つではないかと思われるのですが、本作のそれも強烈な印象を残しました。けど、それがあるからこそただの恋物語にならずにナイス。
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