SSブログ
読んだ本 / 好きな文章 ブログトップ
前の5件 | 次の5件

ちくま哲学の森 [読んだ本 / 好きな文章]

ちくま哲学の森 1 生きる技術

ちくま哲学の森 1 生きる技術

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2011/09/07
  • メディア: 文庫
これまでに2冊を読んだ『ちくま文学の森』っていうシリーズを初めて見かけたのは市立図書館の書架の高ーいところで、その近くの棚に、この『ちくま哲学の森』も置いてあって、いつか読んでみたいなと思ってた。んで、図書館にあったハードカバーの大きいやつではなく、コンパクトな文庫版をゾンアマの古本で買って初挑戦。「哲学」っていうタイトルにビビっていたけど、少なくともこの「~1 生きる技術」にあっては、内容的には随筆集って考えて大丈夫でした。つまり、リアル哲学っぽいのはほとんど無かったから、か弱きオレの脳味噌はことなきを得た。

特に面白いと思ったのは以下の2つかしら。ちょっと長いけど引用してみる。一つ目は斎藤隆介『大寅道具ばなし』というやつで、昭和42年の雑誌『室内』に掲載されたものだってさ。書いた人のことは全然知らないのだけど、熟練の大工が語る道具に対するこだわりのようなものが切れ味の良い文章で描かれていてイカしてるなって。
 たとえば道具だ。道具に対しての扱いや感じ方がまるっきり違う。倅たちには道具はタダの道具だけど、あたしらの年頃に仕事を仕込まれたものは、道具は女房みたいなもんだし、大ゲサに言やア命みたいなもんだ。
 あたしは十六から仕事を覚えさせられたんだが、それから二年目、十八のときだったといまでもはっきり覚えているが、道具についてえらい恥をかいたのが肝に銘じて、それから根性が変った。
 え? なにね、仕事場へいって、年寄りに、
「すいませんが、ちょっと小ガンナを貸してもらえませんか」
 ってったんだよ。そしたらその年寄りがね、ジロリと横目で流し目に見て、なんとも言えない笑い方をすると、小ガンナを渡して寄越しながら、
「ハイヨ。あると重宝だよ」
 って言ったんだ。それだけだが、あたしァ顔から火が出たね。受けとった小ガンナが、ジリッと手に灼きついたような心持ちがして、しばらくは顔もあげられなかった。
 ――あると重宝だよ……。そう言った年寄りの皮肉を、それからあとも時々思い出しちゃア舌を噛み切りたいような気のしたことがなんべんもあるね。その時の、まるで「女房を貸せ」とでも言われたような、不愉快そうな、にがい、そしてあきらめてうすら笑いした年寄りの目を思い出すと、あたしは地ベタを転げまわりたいほど恥しい気がしたもんだ。
 その時からあたしは決心した。
「ヨウシ、道具は貸しても借りねえぞ」
 だけど貸すのはやっぱりいやだった。のちのち自分がキチンと道具を揃えて仕事場にいって、不用意な奴から貸せと言われて渡してやる時は、「あると重宝だよ」とは言わなくても、あの年寄りとおんなし目付きをしているのが自分にもわかったね。

二つ目は、昭和22年の『婦人公論』が出典の、林達夫による『邪教問答』。前から不思議に感じていた「伝統や歴史があるというただそれだけで、(その対象が宗教であれなんであれ)人は何故こうもありがたがるのか」っちゅう点について書かれている文章を初めて活字で読んだものだから感激しちゃった。文章もさすがにうめえし。ただし、この文は自分の謎に対する答えそのものではないんだけれども。
 私があなたの手紙を拝見してひどく気になったことは、このごろ世間を騒がせている新旧のいわゆる類似宗教を頭から「邪教」と決めつけて見下しておられる、その態度であります。あたかもあなたの属しておられる教会が高級でもあるかのように。
(中略)
 あなたは新しく簇生(そうせい)する宗教を「邪教」と呼んでなにか胡散くさい、いかがわしいもののように見ておられるが、いったい邪教という呼称が何を指す言葉であるか、それを考えてごらんになったことがありますか。新しく出現した宗教は、古来、国家によって公認された既成宗教から必ず邪教扱いされてきたのであります。あなた方の奉ずる宗教だって例外でなく、十六世紀にそれが日本にはいって来た後、キリシタン・バテレンといえば妖法を行う邪宗門と相場が決まっていたのです。
(中略)
 すると、あなたはすぐに反問されるでしょう。自分のいう邪教とは蒙昧な神憑り(かみがかり)や狂人やぺてん師たちの合作社を指すのであると。ところがお気の毒だが、あなた方の宗教だって、初期には世人からそう見られていたのであり、また事実かなりの程度にそうでもあったのです。
(中略)
宗教の宗教らしい本来の面目を発揮しているのが、休火山みたいに玲瓏と聳え(そびえ)立って深々と眠っている既成宗教なのか、それともごったがえしに沸き立って身も心も焦しているいわゆる類似宗教なのか、それはにわかに定めがたいことであります。いったい宗教とは何ですか。また宗教の発達とか進化とかいっているのは何のことなのですか。第一、宗教に進化などというものがあるのですか。――すばらしい衣装持ちのお化粧上手の宗教のことです。私はその色とりどりの衣装のことや凝ったお化粧のことをいっているのではありません。白粉(おしろい)ぬきの素顔、着物をすっかり脱ぎすてた素裸の宗教のことをいっているのです。

例によって、筑摩書房のホームページから収録作をペーコピさせてもらうぜぇ。
道ができている場所では タゴール(山室静)/空気草履 古今亭志ん生/大寅道具ばなし 斎藤隆介/対談 浪花千栄子・徳川夢声/いろはだとえ モラエス(花野富蔵)/新橋の狸先生 森 銑三/貨殖列伝 司馬遷(小川環樹)/長者の聟の宝舟 辻まこと/高利貸に就いて 内田百間/ハリー W・サローヤン(関汀子)/饒舌について プルタルコス(柳沼重剛)/嘘つきの技術の退廃について マーク・トウェイン(三浦朱門)/結婚生活十則 サーバー(鳴海四郎)/僕の孤独癖について 萩原朔太郎/ある〈共生〉の経験から 石原吉郎/権利のための闘争(抄) イェーリング(村上淳一)/レッスルする世界 ロラン・バルト(篠沢秀夫)/ニコマコス倫理学 第二巻第九章 アリストテレス(高田三郎)/みずから考えること ショーペンハウアー(石井正)/邪教問答 林 達夫/脳病院からの出発 チェスタトン(安西徹雄)/随想録より モンテーニュ(関根秀雄)/いかに老いるべきか ラッセル(中村秀吉)/ケニヤ山のふもと ケニヤッタ(野間寛二郎)/サーメの暮し ユーハン・トゥリ(三木宮彦)/結婚について・子どもについて ジブラーン(神谷美恵子)/老子(抄) 老子(小川環樹)/日本の理想 唐木順三
あまりに乏しすぎるオレの"生きる技術"が向上したかどうかは大いに疑わしいにせよ、上に引用した2編以外にもチラホラとそそられるものもあったし、『文学の森』のときと同じく色んな有名作家の文章を味わえるお得感も感じられたから、また忘れた頃に残り7冊のうちどれかを読んでみようかな。

+ + + + + + + +

図鑑少年 (中公文庫)

図鑑少年 (中公文庫)

  • 作者: 大竹 昭子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/10/23
  • メディア: 文庫

ずーっと『哲学の森』は飽きるかも…みたいなことを思って、この短篇集も並行して交互に読んでみた。もともと1999年にハードカバーの単行本が出た当時、すごく気に入っていたんだ。ブッコフで文庫化された古本を発見して、わー懐かしいと久しぶりに読んでみると…やっぱりこの人の書く文章はすごく良いと思う。さらさら&シャキッとしていて嫌味がない反面、人生の苦味をどこか感じさせる。それでいて、しっかりと前向きなんだ。…何を言ってるかサッパリですよね、サーセン。とにかく、向田邦子に通じるような、オレの一番好きなタイプの日本語だっつうことです。ここでなぜか唐突に裏表紙より紹介文を引用。

都会に暮らす「わたし」が遭遇する小さな事件や出来事。それらは本当に起きたのか、それとも「わたし」の妄想なのか。胸にせまる人やもの、音や情景を辿って、現実と非現実のはざまをたゆたう24篇。新しい都市奇譚として話題を集めた作品集の待望の文庫化。

P1170024.JPG
もうずっと前の話だから正確には覚えていないけれど、同じ大竹昭子さんによる『アスファルトの犬』という短篇集にあった一篇(ニューヨークかどこかのグラフィティ・アーティストの話)にとても惹かれて、確かそれがきっかけになって『図鑑少年』も読んでみたんだと記憶している。じゃあ、『アスファルトの犬』は何を契機で読もうと思ったのだろう。それはもう思い出せないや。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

森と東野 [読んだ本 / 好きな文章]

P8020011.JPG
■ なにがきっかけかは思い出せないのだけれど、むかーし読んだことのある『舞姫』と『高瀬舟』をもう一度読んでみたくなって、だったらいっそのこと森鴎外の全集っぽいの買っちゃおうと思って森鴎外の全集っぽいの買っちゃった。筑摩書房から出ている、ちくま日本文学っていうシリーズで、そりゃあもう名だたる文豪の先生方がラインナップされております。例によって、ゾンアマの古本コーナーで入手。なんでこのシリーズを選んだかっていうと、前にも他の人たちもこれで読んだ(つうか、色川武大と尾崎翠も間違いなく持ってたはずなのにどこやったんだ! オレの馬鹿ッ!)ことがあって、読み易さを体験済みなのとコレクション欲みたいなのが少しウズいたのとで。

P8020009.JPG
■ 全集っていうとどうしても図書館にあるような、重くてどデカいサイズを想像しちゃうけど、これは文庫サイズなのが素敵なんだ。でもね、なんかオレ勘違いしてました。届いた森鴎外は、今まで買ってきたやつみたいに表紙がボール紙の硬い感じではなく普通にペラペラだし、そのせいかサイズが違う。 震える手で自分のタブレットをスワイプ、青ざめた顔で筑摩書房のホームページを検索すると…なんということでしょう、「ちくま日本文学全集」というシリーズは廃盤になっていて、そこから新しく「ちくま日本文学」にリニューアルしたみたいね。ラインナップされている作家の総数も、60人から40人へと減っている。Oh...

P8020010.JPG
■ ともあれ、エリスさんの悲劇と庄兵衛の戸惑いが久しぶりに味わえたからとりあえずは満足。それ以外は、うーん、『山椒大夫』と『魚玄機』がちょっと面白かったかな。まあ、オレには高尚すぎた、あるいは本格派すぎたのでありましょう。ただ、『阿部一族』とかの時代物はおじいちゃんになった頃にでも読んでみたい。なんとなく収録作を筑摩書房のサイトから以下にコピー。
大発見 / 鼠坂 / 妄想 / 百物語 / かのように / 護持院原の敵討 / じいさんばあさん / 安井夫人 / 山椒大夫 / 魚玄機 / 最後の一句 / 高瀬舟 / 寒山拾得 / 文づかひ / 舞姫 / 沙羅の木


P8020016.JPG
■ 同時に、芸人・東野幸治の小説も並行して読んでみた。ずーっと森鴎外じゃキツいだろうなと弱気になって、なにか現代人、せめて昭和以降の人を…と思ってダンボールをあさると、たぶんブックオフ100円コーナーで買ったのであろうこの本が出てきた。ハナから「芸人の書く小説なんて、どうせ…」なんて決めつけちゃいけない、そんな偏見こそが自分の読書体験を狭めているのだ、作家の名前ではない、書物そのもの、そのページに書かれている一語一句に真摯な態度で向き合うのだ、自分よ! とは思っていたんスけど、やっぱすごくつまんなかったです。テレビに出ているときの東野幸治はすごく面白いと思うんだけどね。

ちゅうわけで今年もありがとうございました。よいお年をー。
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

だれもが知っていて、だれも知らない女 [読んだ本 / 好きな文章]

数年前から気になっていたアメリカの作家、ジェイムズ・エルロイの小説を初めて読んだぜ。したら、とっても面白かった!! 決してお上品とは言えない、B級丸出しの低俗作品だとは思うけど、これだよ。ほんと、むさぼるように読んじゃった。

P8310005.JPG

お話の題材は1947年に起こった実際の猟奇殺人事件(現実には未解決のまま)。本作ではそれをボクサー上がりの刑事バッキー・ブライチャートが執拗な捜査で追いかけていくというもの。この小説の本筋であろう二転三転する謎解きの要素、つまり「エリザベス・ショートを惨殺した犯人は誰なのか」という点も十分に合格点だった(おまえ何様!?)けど、オレが感じたこの作品最大の魅力は、なんつうても主人公バッキーおよびその周辺人物、すなわち相棒の刑事と恋人に関する人物描写やね。切ないの。ハードボイルドという雰囲気とはまたちょっと違う、みんな自分の置かれた境遇にもがいているんだけど、それが上手く転がらないもどかしさ・じれったさっつうか。向こう側にいる人たちと自分(=主人公)たちとの根本的な差違、それを冷めた目でとらえつつもオレぁ熱くなるときは黙っちゃいないぜ! 的な。例によって何言ってんのか分かんなくてすいません。ともあれ、事件解決に対する主人公の泥まみれの執念と、事件そのものの猟奇性・グロテスクさと、エンターテイメント要素たっぷりなバイオレンス描写と、警察内部の腐敗(「ありがち」とか言わないで!)と、あの人やこの人に巣くう狂気と、大戦後まもない混沌とした時代性が一体となって、不思議な熱気をかもしだしてんのさ。この気迫、このテンション、すげえなあと思った。本が書かれたのは80年代みたいだけど。

ちなみに、オレクラスの低脳だとカタカナの人物名でやっぱりこんがらがった。ひとりの人物を指すのに、上の名前と下の名前とニックネームとが交互に出てくると、我が輩が誇る少容量メモリではさすがに処理しきれない。

41WaLe1DyNL._BO2,204,203,200_PIsitb-sticker-arrow-click,TopRight,35,-76_AA300_SH20_OU09_.jpg

ところで、古本で買ったこの文庫本の表紙は被害者をもとにした画像だそうで。うーん、これが本物・本人なんだと言われちゃあどうしょうもないけど、いま売られている新しい版っぽいバージョンの表紙のほうが…美人…本そのものが魅力的つうか…完全なるゲス的観点で、まじ申し訳ない。でもね、裏表紙の要約文(?)は興味をもたせるのに充分な、かっちょいい文章だった。
1947年1月15日、ロス市内の空地で若い女性の惨殺死体が発見された。スターの座に憧れて都会に引き寄せられた女性を待つ、ひとつの回答だった。漆黒の髪にいつも黒ずくめのドレス、だれもが知っていて、だれも知らない女。いつしか事件は<ブラック・ダリア事件>と呼ばれるようになった――"暗黒のLA"四部作の、その一。
もちろんエルロイが書いたんじゃないことは分かっているけれど、「だれもが知っていて、だれも知らない女」っていうフレーズ、し び れ る !!

+ + + + + + + + + + + + + + + +

そういえば、自分が面白いなと思った本を読んだあとはアマゾンのレビューで他の人の感想を探すことがあります。んで、この本もしかり。その中に気になったものが一つあったんだ。

■ アマゾンのレビューより
15 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 暗黒面を取り上げ過ぎ, 2006/11/4
レビュー対象商品: ブラック・ダリア (文春文庫) (文庫)

本作を読んだのは5年以上前の事。これ程の話題作になるとは思わなかった。想像するに話題の原因は本作がLA暗黒4部作の第1作とされ暗黒面が(出版社によって?)強調されている事、物語が実際にロス空港の近くの空き地で起きた猟奇殺人(被害者の呼称がブラック・ダリア)をモデルにしている事、作者の母親が殺人の被害者になり、それが作品に反映されていると想像される事、デ・パルマ監督による映画化がされる事あたりか。

しかし、本作は「東電OL殺人事件」、「世田谷一家殺人事件」のように作品中でモデルとなった事件の核心に迫ろうとする意図はなく、主人公の黒人刑事を中心とした当時のロスの雰囲気を描こうとしたものである。実際、事件は未解決のまま終る。作者に猟奇趣味はない。戦勝後のロスの自由ではあるが退廃的なムードは良く描かれているし、人種差別やドラッグ等も当然のように描かれる。そうした雰囲気をダークと感じる人にはそれで良いと思うが、暗黒面だけがエルロイの持ち味ではない。

主人公の黒人刑事は、人種差別の壁もあって屈折した行動を取るが、次第に事件にのめり込んで行く。本作は主人公のある種の精神的成長物語とも取れる。その他の人物・背景に関する書き込みも多いので、色々な受け止め方ができると思う。ブラック・ダリアをモチーフに、当時のロスの人間模様を描いた秀作。

こ、こ、「黒人刑事」!?!? じ、じ、「人種差別の壁もあって屈折した行動を取る」!?!?
このレビューを初めて読んだとき、心底ビックリした。だって、本作を読んでいるあいだ、主人公のバッキー・ブライチャートが黒人だなんてオレはツユほどにも思っていなかったし、もしそんな大切な要素を見落としていたんならストーリーの意味合いがまるっきり違ってしまう。これはもしや、ジョシュ・ハートネット(=白人の俳優)が主演の映画を先に観てしまっていたせいで、自分の中で「主人公は白人だ」という刷り込みが出来ていたのかも…、などと慌てて文庫本のページをパラパラ繰るも、どこにも主人公が黒人であること、あるいはそれを匂わせるような記述は見当たらないんですけどー。それどころかさー、394ページ目に「ブライチャートとブランチャード。身をもちくずした二人の白人ボクサー。」っていう文を発見したんですけど!! は・く・じ・ん・ぼ・く・さ・ー!! はー、スッキリした。ちょっと粘着っぽいですかね、サーセン。

改めて言うまでもなく、間違いや思い込みというものは誰にでもあるものです。もちろん粗大ゴミ、別名オレもその例外ではございません。ただ、このレビューにおける「これ程の話題作になるとは思わなかった」だとか「それだけがエルロイの持ち味ではない」といった表現から感じられる、このレビュアーはよっぽど小説(少なくともジェイムズ・エルロイの著作)を読み込んでいらっしゃる文学通なんだろうなっていう印象と、ストーリーを左右しかねない重要な設定を思いっくそ読み違えている超絶読解力との間に、わたくしは強烈な断絶、深い闇のようなものを感じたということをお伝えしたいだけなのです。

さて、「暗黒のLA四部作」の一発目を読み終わって、次にエルロイを読むとしたら四部作の第2弾にあたる『ビッグ・ノーウェア』になるはず。いつになるのか分からないけど、次のも面白いといいなー。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ちく森 [読んだ本 / 好きな文章]

P6140009.JPG
『ちくま文学の森』という、古今東西の作家による短編を集めた全10巻の文庫があって、ずっと前に買って放置してた『美しい恋の物語 』(ちくま文学の森1)と『悪いやつの物語 』(ちくま文学の森7)の2冊を交互に読み進めてたんだ。寝る前に、薄れゆく意識のなか半目開きでちょこちょこと。ちなみに、なぜこの2冊を選んだのかは今となっては謎です。

『美しい~』は14編、『悪いやつ~』は21編の話が収めらていて、「名前だけは知っているんだけど実は読んだことなくて…」っていうような有名な人の文章が一冊でいろいろ読めたから、その全部が面白かったわけじゃないけれど、お得感はけっこうなもの。それぞれの収録作品は以下の通り。筑摩書房のホームページよりペーコピさせてもらいます。

『美しい恋の物語』
初恋 島崎藤村/燃ゆる頬 堀辰雄/初恋 尾崎翠/柳の木の下で アンデルセン(大畑末吉)/ラテン語学校生 ヘッセ(高橋健二)/隣の嫁 伊藤左千夫/未亡人 モーパッサン(青柳瑞穂)/エミリーの薔薇 フォークナー(龍口直太郎)/ポルトガル文 リルケ訳(水野忠敏)/肖像画 A・ハックスリー(太田稔)/藤十郎の恋 菊池寛/ほれぐすり スタンダール(桑原武夫)/ことづけ バルザック(水野亮)/なよたけ 加藤道夫


『悪いやつの物語』
囈語 山村暮鳥/昼日中 老賊譚 森銑三/鼠小僧次郎吉 芥川龍之介/女賊お君 長谷川伸/金庫破りと放火犯の話 チャペック(栗栖継)/盗まれた白象 マーク・トウェイン(龍口直太郎)/夏の愉しみ A・アレー(山田稔)/コーラス・ガール チェーホフ(米川正夫訳・編)/異本「アメリカの悲劇」 J・コリア(中西秀男)/二壜のソース ダンセイニ(宇野利泰)/酒樽 モーパッサン(杉捷夫)/殺し屋 ヘミングウェイ(鮎川信夫)/中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃 三島由紀夫/光る道 檀一雄/桜の森の満開の下 坂口安吾/女強盗 菊池寛/ナイチンゲールとばら ワイルド(守屋陽一)/カチカチ山 太宰治/手紙 モーム(田中西二郎)/或る調書の一節 谷崎潤一郎/停車場で 小泉八雲(平井呈一)

P6280002.JPG
まず前者でいちばん面白かったのが『ポルトガル文』(リルケ訳/水野忠敏訳)っていうやつかな。フランス男にフラれたポルトガル人の尼さんが、計5通のお手紙を通してほとばしる情念を叩きつけるッ! その流れるような、かつハイテンションな文面がすげえ楽しかった。きっと訳も上手いんだろうな。そもそもなんで訳者が二人いるんだよ馬鹿と仰りたいでしょうが、これは17世紀のマリアンナ・アルコフォラドっていう実在の尼さんの本当の手紙らしいス。それをドイツのリルケが訳して、さらにそれを…という。人の手紙を勝手に出版すんなよな。
あとは、ウィリアム・フォークナー『エミリーの薔薇』(1930年)が孤独感ビシビシで、伊藤左千夫『隣の嫁』(1908年)が農村エロスぷんぷんでそれぞれ気に入った。尾崎翠の『初恋』(1927年)も爽やかで良かった。フォークナーは短篇集を捕獲。いつか読もうっと。

もう一冊の『悪いやつ~』だと、檀一雄による『光る道』(1956年)がずば抜けて好きです。律令制下の日本、お姫様を連れ出した若者のお話。姫様の純朴さの裏にある何かがちょう怖い。坂口安吾の『桜の森の満開の下』も同じようなテーマで、中世の都を舞台にした女のクレイジーっぷりが面白かった。なんか最近、鎌倉から室町期あたりの中世のドロドロ感というか権力がめちゃくちゃに乱立していた混沌さとかに惹かれる。そう、いま中世がアツい! 今年の夏は中世で決まり! 代官山では水干・直垂がマスト!
さらに、高校生だか大学生の頃に『月と六ペンス』を読もうとして数ページで放り出したサマセット・モームの『手紙』(1926年)が、話そのものは大して面白くはなかったものの、普通の小説として普通に読めたから安心した。谷崎潤一郎が書いた『或る調書の一節』は、読んでいてほんとに胸くそ悪くなった。「悪いやつ」の本なんだから、これこそがテーマ通りの作品なのかもしれないけどねー。

いま読もうと思っててツンドクしてる本が消化できたら、また気まぐれにこのシリーズのどれかを手にとりたいッス。残り8冊、一年に1冊ぐらいのペースが自分にはちょうど良いかも。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

またマンガ [読んだ本 / 好きな文章]

そう、分かってる。いまの自分にどうしたって足りないのが、池上遼一的な要素であることは。

RIMG5512.JPGちゅうわけで、ハードボイルド成分を補給すべく『strain』(全3巻)と『サンクチュアリ』(全7巻)を2週間かけて読んだよ。プハーッ。男くさくて暑苦しくてオモロー。おおざっぱに言えば、すごいポテンシャルを秘めた主人公が次から次に出てくる強敵と闘うっていう少年漫画的スタイル。
RIMG5515.JPG勉強不足ゆえ、原作担当の武論尊(ぶろんそん)と史村翔(ふみむらしょう)が同一人物だって知らなかった。そういえば梶原一騎もペンネームを使い分けてた気がするナー。

とりあえず、もうこれでオレが仮にマレーシアを舞台にした血みどろの抗争劇に巻き込まれたとしても大丈夫だし、政界進出を目指す親友のために極道の世界で覇権を争うハメになっても、その心構えは出来ました。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:コミック
前の5件 | 次の5件 読んだ本 / 好きな文章 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。