マスクかぶらされて走るシーンが秀逸 [映画やドラマ (アメリカのやつ)]
アメリカ南西部。キャプテン・スポールディング(シド・ヘイグ)、オーティス(ビル・モーズリー)、ベイビー(シェリ・ムーン・ゾンビ)ら、殺人を愛する狂人一家はとうとう警察に包囲されるが、激しい銃撃戦の末なんとか逃げのびる。逃亡先でも人を殺し続ける彼らだが、ワイデル保安官(ウィリアム・フォーサイス)は執拗に一家を追い続け…というお話。
何年か前に『マーダーライドショー』というホラー映画を借りて、この度ようやっと続きも観てみました。このDVDの特典映像で、監督のロブ・ゾンビは「これは『マーダーライドショー』の続編じゃないと思って欲しい」みたいなことを語っていましたが、やっぱり前作を観てからのほうが十分に楽しめると思う。
あ、始めに断っておかねばならないのは、スプラッターやグロ描写が苦手な人は絶対借りちゃダメだと思った。それ系のジャンルの中でいうと本作の残酷度はたぶん初級~中級程度で、これよりショッキングなのはいくらでもあるとは思うんですが、それでもやっぱりキツいシーンがいくつかあるんで。それと、理由もなく殺人を犯すシーンがやっぱりあって、そういうのに納得いかない人はこの映画にも納得いかないはず。プンプン。
ほんで、映画自体はどうなの面白いのっていうと、非常に楽しめました。
前作『マーダーライドショー』が、1人のヒッチハイカーを乗せてしまったことから若者グループが狂った一家の餌食に…っていうストーリーで、かの古典的傑作『悪魔のいけにえ』や、その他の伝統的ホラー作品へのオマージュ全開でした。それはそれで面白かったんだけど、黙々とリンチショーが続いてるような気がしてちょっと単調ではあったし、それほど目新しい発見もなかった。
今回大きく違うのは2つ。まずは、前作や似たような多くのスプラッターものが採るようなような被害者視点ではなく、保安官から逃げ続けるイカレ野郎どもからの視点を中心として物語が進められること。道徳観ゼロのロードムービーと言えなくもないかも。
ふたつ目は、前作が屋敷や地下などを主な舞台としていて、圧迫感のあるジメジメしたトーンだったのに対して、今作はカラッと、あるいは70年代の刑事物みたいにザラッとしてる。それは単に昼間のシーンが多いとか乾燥した南西部が撮影現場だとかいうことにとどまらず、それ以上の何かがあるような気がします。それが何かはもちろん僕には分かりませんけども!
とにかく、この2つのポイントによって、「まーた前と同じような正統派ホラーなんでしょ」というヘボ予想は良い方向へ裏切られて、感動の(?)ラストまでダレることなく楽しめました。もっと早くに借りとけば良かった。うーん、こうして考えると監督の「続編じゃないんだ」発言もうなずけるかも。
あと、知ってる人も多いかと思いますけど、この監督はもともとバンドやってる人です。そのせいか、音楽の使い方は文句なくカッチョ良い。これが意外と大きなポイントではと思った。特にオープニング・クレジットの入れ方はセンス抜群でワクワクした。
願わくば、この監督に違うジャンルの映画をぜひ撮ってほしいな。これだけキチッと作れる人なら、別の枠組みでもぜったい面白いのが出来ると思う。ちょいと調べてみると、『グラインドハウス』(日本では『デス・プルーフ』と『プラネット・テラー』に分けて公開されたやつ)のウソ予告編を作ったりしてるそう。…いや、そういうのじゃなくてさ。
最後に、残虐映画観て「面白い面白い」ってなんべんも変態じみたこと言ってますけど、あくまで映画の感想としてですからよろしく。人殺すのは良くないってちゃんと分かってるんで、いくら低脳な自分でもそこは大丈夫です。ご時世がら、つっこみに敏感にならずにはおられない。
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