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まだ「背表紙」とか言ってる人がいる! [読んだ本 / 好きな文章]


町でいちばんの美女 (新潮文庫)

町でいちばんの美女 (新潮文庫)

  • 作者: チャールズ ブコウスキー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 文庫

アメリカの有名なカルト作家にして、わが心の師匠ショーン・ペン先生が敬愛している作家だというのをずっと昔に聞いて、いつか読まなきゃ読まなきゃと思いつつこないだやっと読んだという次第。30の話が収められている短編集です。そのタイトルをちょっくら抜き出してみますならば…
「テキサスの売春宿」「ファックマシーン」「10回の射精」「なかなか交尾できない12匹の空飛ぶ猿たち」「人魚との交尾」「女が欲しい」「淫魔」「白いプッシー」

…どうだい? お下品だろう? エロについて7割、酒について2割、競馬について1割というような具合で、逆三角形の眼鏡かけた教育ママなんかは「んまーッ、こんな本読んじゃダメざます!」って間違いなく言いそうな内容でした。ただ、確かにかなり下品で相当に退廃的ではあるのだけれど、全体として芯が乾いている。諦観というか、どこかでブコウスキーによる自分自身を突き放した視線を感じる、そういう意味で独特な文章でした。小説としてオレが大好き! というタイプの作家ではなかったものの、その乾いた雰囲気は嫌いでないので、読んで損は無かったなと思った。

もっとも、こういう風にある種の文学的な価値みたいなものを感じさせるのは「新潮効果」かもしれない。あ、新潮効果っていうのは今オレが勝手に考えた造語で、「新潮文庫から出されている本というのは、何かしら一定のレベルをクリアした作品ばかりで、もしその本がつまらないのならばそれはすなわちお前の理解力が足りないためである!」と思い込むオレ固有の症候群のことです。目下、難病認定申請中。

小~中学生のころ、「本」というと文庫本、そして文庫本というと本屋さんで棚の面積を一番広く占めていたように思う新潮文庫のことでした。作家別に色分けされたそのつや消しの背表紙から想像するのは「小説の正統(なんじゃそりゃ)」という勘違いしたイメージ。新潮の次に好きだった文春文庫は、いまはどうかうろ覚えだけど、ビニールっぽい素材のカバーでテカテカしていたから、なんとなくポップでやわらか。講談社文庫は何種類か色があったような気がするものの、どれもいまいち地味ーな感じ。薄いブルーのハヤカワは変人向け。ベージュ(?)のお固ーい岩波文庫は、もう読み物じゃなくて史料集か何か。古本屋で見る岩波はカバーすら無いやつもあるから、ますます古文書っぽい。

少年は少年なりにこんな印象を(勝手に)抱いて、例えば同じスティーヴン・キングでも、つや消し新潮から出ていた『ゴールデン・ボーイ』はシリアスな精神崩壊もの、テカテカ文春から出ていた『シャイニング』は、エンターテインメントなホラーもの…という風に、「背表紙」のイメージを作品の中にまで投影していたフシがあって、なおかつ根拠のない新潮びいきはこの頃から始まっていたように思う。ただ、この病気が治るのも時間の問題かもね。だって将来は紙の本が無くなるとか本気で言われ始めたからさ。くそくらえ。

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回想のビュイック8〈上〉 (新潮文庫)

回想のビュイック8〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 文庫

てなわけで、新潮文庫(笑)の、スティーヴン・キング(笑)です。読書の嗜好が中学生時代からまったく成長していないことに、改めて自分でもビビった。
この作品は上下巻合わせると700ページほどで、そこそこ長い。大学進学を控えた主人公の若者が、勤務中の事故で亡くなった彼の父親について、同僚たちにその思い出を語ってもらうという回想形式でストーリーが描かれます。田舎町の警察官である父親は、ある謎めいた車「ビュイック8」を証拠物として押収、所属する署に保管している間、その車をめぐって摩訶不思議な現象が…みたいな。

正直言って、最後のクライマックスは盛り上がりに欠けるなーという印象だし、もうちょっとコンパクトでもいい話だったんじゃないのかなと思わなくはないですが、そこは巨匠、飽きさせはしないです。なんたって人物造形がすごい。オレがスティーヴン・キングを好きなのは、まさしくこういう「主要人物はもちろん、本筋とは関係ない人までもがなぜか細かく描かれている」という点なのかも。よく分かんないけど。サスペンスないしホラーとしてはもっと他にキング作品で面白いのがあるものの、父子ものという視点からならば、わりかしオススメ。なんたって新潮だしね!
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