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他の著作も読みたくなった [読んだ本 / 好きな文章]


不思議の国アメリカ―別世界としての50州 (講談社学術文庫)

不思議の国アメリカ―別世界としての50州 (講談社学術文庫)

  • 作者: 松尾 弌之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 文庫

いつものようにブックオフ100円コーナーにて、小説ばっかだと飽きるかなあ→なんかノンフィクションでも適当に仕入れとくかあ→でもやっぱ100円コーナーにはあんま面白そうなのねーなー→つうか最近の新書はほとんど「タイトルの珍奇さ勝負」みたいになっててまじくだらないんですけどあははー→とりあえずアメリカなんとかいうこれでいっかと、ほとんど考えずに買った本(ちなみにアマゾンの銭ゲバリンクでは「学術文庫」版になってますけど、オレが買ったのは「現代新書」版です)。したら、自分がずっと知りたいと思ってたことがビシリと、しかも分かりやすい文章で書いてあって、グイグイ読み進めてしまうとともに著者のファンになってしまった。

この本には、前から興味があったアメリカと風土(地理的要素)と住人の気質との関係性、ざっくり言うと、どのエリアだとどんなタイプのアメリカ人なのかっつうことが主に書いてありました。例えば、本書を読む前に抱いていたオレのアメリカ人像とは「東海岸が気取り屋のインテリ、南部が人種差別主義者、中西部が狂った連続殺人鬼、西海岸がヤク中で…」というものだったのですが、その間違いすぎたイメージを各地域ごとに、かつアメリカ史と絡めつつ詳しく修正することが出来て、それだけでも儲けもん。さらに、これまたよく分からなかった「州と連邦(国)の関係性ないし上下関係」と「それらに対する住人の意識」みたいなものも本の後半で述べられていて、こちらも今までモヤモヤしていたところだったからスッキリしました。簡単に言うと、アメリカ人は州よりも連邦を信用していなくて、まずはじめに自分の生活地域ありきなんだってさ。ファッキンジャップのオレからすると、憲法やら軍隊やら警察やらが州と連邦とでそれぞれ二重にあってめんどくさいんじゃないかなあとも思うけど、そこらへんは大丈夫みたい。

そして、これは内容うんぬんではなく、文章の書き方がすごく流麗で読み易くて、もしかしたらその点がいちばん気に入ったかも。以前、同じく(別の)大学教授が書いた同じく新書であるところの『ワスプ(WASP)』という本(アメリカにおける白人エリート層の実態とかなんとか)を読んだ(過去ログ宣伝厨)けれど、あれは読みにくいったらなかった。本筋とそうでないところが同じようなトーンで述べられているために、どこに力点が置かれているのかとても分かりづらかったし、それこそ「てにをは」というレベルの細やかさ、日本語のなめらかさに欠けていたように思う。
それに対してこの本を書いた人は、まず基本的な日本語がすっきりしていてスラスラ読める。どこかの糞ブロガーすなわち自分みたいにダラダラ、ぐちゃぐちゃしていない。もちろんこれが学術書ではなく新書だったということで、オレ級のボンクラでも分かるようにという配慮から、そのような易しい書き方をしたのだろうということは明白でしょうけども。

たとえば、アメリカ南部の気質を詳述する項にて、こんなくだり。
 社交好きはパーティーのみにあらわれているのではない。南部の人たちの遊びには、ある一つの傾向がうかがえる。犬をつれての狩り、魚つり、ダンス、闘鶏などが、伝統的な遊びとして受けつがれているが、そこで大事なのは、参加者のうちの誰が勝つとか、誰がすぐれた技術をもっているかなどということを競うのではない。むしろ、参加するということに意義があるのである。
 したがって上手な者も下手なものも、和気あいあいのうちにピクニック気分で一日をすごすが、実はそこに眼目がある。現代では南部人の遊びにゴルフやテニスが加わっているが、参加することに意義があるとする遊びの精神は、いまだにすたれていない。したがって、血まなこになって勝つことに集中する北部人や日本人の態度は、違和感をもってむかえられることになる。
 ゆっくりと時間をかけて社交を楽しむという態度の中には、他の人間に対する並々ならぬ関心があることがうかがわれる。しかも興味の対象は白人に限られるのではなく、黒人、善人、悪人とまんべんなくふりむけられ、人生のあらゆる側面が大いなる関心事項となる。

(講談社現代新書版100~101ページより)
あれ? そこまでずば抜けた文章でもないじゃんとか思ってる? おかしいな…。と、とにかく、全体を通じてこのスムーズさがとても印象的だったんよ。

ところで、アマゾンのレビューの中に、「この本によるアメリカ人の区分は、あまりに類型的すぎて、本当のアメリカ人に聞いてもそんなことないって言ってた。だからダメダメ。かーっ、ぺッ!!」っていう意見がありました。確かに本書は(現代新書版では)1988年に初版発行となっていて、間違っても新しいとは言えない。だから、時代による変容もおおいにありましょう。それに、「東京の人はみんな冷たくて、大阪はみんな陽気、九州の男性はみんな豪快、東北の人はみんな無口」とか言われたら、そりゃちげーよとなる。でも、著者も「地域差は明確に区分できるものではないし、ここに挙げるのもあくまで代表的なもの」という風な断りを慎重に入れてます。そもそも、オレは地域間によるアメリカ人像の違いというものが"大まかに"知りたかったのだから、まったく問題ないです。そう、つまり、日本における上述のベタな類型像みたいなものが欲しかったのです。それが分かってから、細かい修正情報を仕入れていくほうが効率的ではなかろうか。効率的って、何が?
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