ヤスシふたたび [映画やドラマ (アメリカ以外のやつ)]
時代は昭和。当代きっての売れっ子作家・伊上洪作(役所広司)は、郷里の伊豆で暮らす年老いた母・八重(樹木希林)に痴呆の症状が出始めていることに気づく。しかし、幼い頃に家族と離れ、血のつながらない“祖母”と土蔵の中で多感な時期を過ごした洪作には、「母に捨てられた」との複雑な思いがあった。次第に症状が進み、もはや家族の顔さえ分からなくなった母に対して、愛憎半ばする感情をぶつける洪作だったが…というお話。
そうです、数年前にオレが激賞した『しろばんば』(過去ログ宣伝厨)を書いた井上靖・大先生による自伝的小説をもとにした映画でございます。ただし、この映画の原作は読んでいないっス。テヘ。
テーマがテーマだけにか、当日の客層はババア率高し。実際、劇場の段差すらサッサと登れない婆ちゃんも観にきてた。数列離れていたとはいえ、通路側に居たオレはどうしてそれを黙って見ていたのか。連れとおぼしき人が手伝うまで、どうして手を貸さなかったのか。死ねよ自分。
んで、本作。
ところで、上述『しろばんば』で描かれていた幼少期の別離は、もちろんこの映画の中でも説明されるんですけど、『しろばんば』を読んでないと映画を楽しむほどにはよく分からないんじゃないかなと思った。ただでさえ複雑な事情なんだし。
どうせ『しろばんば』を読んでいないおまえらと違って、かの大傑作をオレは既に2回読んでいたから、役所広司が娘役の宮崎あおいに向かって語る「おぬい婆さんってのはなあ…」とか、そこらへんの人間関係はついていけたけど、どうせ『しろばんば』を読んでいないおまえらはキョトンとすること請け合いです。そんで、そういう幼少期の複雑な事情が分からないことには、この映画のクライマックスがもつ意味合いとかもだいぶ違ってくると思う。どうせ『しろばんば』を読んでいないおまえらがもしこの映画を観ようと思うのならば、ぜひそれを読んでからがオススメ。そろそろムカついてきた? HAHAHA、ご容赦ご容赦。笑顔を取り戻したら、さあブックオフの100円コーナーへ。ボロボロになった『しろばんば』が売っているハズだから。どうせ『しろばんば』を読んでいないおまえらでも100円なら惜しくはあるまいて。
以下、こまごまと。
▼主人公の三女でカメラマン志望という役どころの宮崎あおいがオリンパス「ペン」(らしきカメラ)を使っていてクスッときた。つうか、オトナの事情てやつ?
▼次女役の菊池亜希子と、主人公の妹役キムラ緑子の演技がとても良かった。菊池亜希子さんていうのはモデル出身らしいスね。初めて観た。でも、いちばんはもちろん樹木希林だ。『歩いても 歩いても』のときと、その演技は勝るとも劣らず。
▼劇中に出てきた主人公の自家用車の色がちょう素敵だった! 深みのある、かといって暗すぎない青色。しびれる。
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んで、去年の秋ごろ、『わが母の記』の公開よりも半年ばかり前にTBSで放送された『初秋』っていう、これまた原作が井上靖のドラマもこの映画のあとに観たんスよ。オレの井上靖レーダーに引っかかってレコーダーに撮りっぱになっていたもので、監督/主演も同じ原田眞人/役所広司。
でも、こっちは(少なくとも自分には)ぜんぜんダメだった。脇役のキムラ緑子(またか!)、でんでん、岩松了なんかは良いなと思ったけど、肝心のお話が、単なる中年おっさんの欲情話にしか見えなくて。舞台である京都、ヒロイン役の中越典子がたしなむ伝統工芸、壮年期ならではの悲哀・やるせなさみたいなものもテーマだったのかもしれないけど、オレ、そういう繊細なのよくワガンネ。
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